HOTEL
第65回『DOUBLE STANDARD おつりが足りないよ!』
学生さん達はとうとう夏休みに突入しましたね。お仕事人達にとっても、通勤電車がすくのは喜ばしいことです。ワーイ。さて、ホテル最終回の今週は、先週掲示板で話題になったdouble standardについてお話ししましょう。

海外に出るとしばしば出くわすのがdouble standard(不平等な二重基準)。現地価格とは別に日本人価格が設定されていることも珍しくありません。
この二重基準にも、二種類あります。ひとつは、理屈をこねることこそが商売だと言わんばかりに、頑として高い値段を主張するタイプ。個人商店や屋台などに多い傾向があります。もうひとつは、どうせ文句を言ってはこないだろうとタカをくくっているけれど、面倒なことは避けたい小悪党というやつ。それなりに名の通った観光名所だと、表沙汰になるのは困るという弱点があるので、圧倒的にこちらが多いです。そして、その場合はこちらが断然有利。

かつて社員旅行でグアムの某ホテルに泊まったことがあります。名前を言えば誰もが知っている、世界的に有名なホテルチェーン。プールサイドにはバーがあり、夜には多くの社員が集まってきて、楽しく飲んでいました。
が、「もう一杯いこうか」と数人でスタンドに出向いたとき、隣の社員がバーテンダーにビールを1本頼んで5ドル渡し、おつりを1ドルもらったのが目に入り、私はとっさに「あれ?Hey!」と言ってカウンターに手を置きました。さっき私が買ったときは2ドルだったからです。私は隣の子に「ビールは2ドルだよね?」と聞くと、彼女は「うん」と言いましたが、その向こうの子は「4ドルだよ」と言います。2ドルと言った彼女は、アメリカに留学経験あり。料金表がないのをいいことに、バーテンダーが何をやっているかは明白でした。
私はすぐさま彼にA beer is two dollars, right?と聞きました。ちょっとすごむような態度だったかも。Ah, yeah.と彼。He gave you five dollars. He's been short-changed.(彼は5ドルあげたんだから、おつりが足りないよ)と言うと、彼はOh, yeah. Sorry.と言って、バツが悪そうに2ドル返してくれました。

short-changeとは、「わざとおつりを少なく渡す」という動詞。shortはもちろん「短い→足りない」というところから来ています。changeには、「変化」だけでなく、「おつり、小銭」という意味もあります。道ばたでうつろな目をして紙コップを振りながらChange, please.と言っている人達は、漠然と変化を求めているわけではなく、もっと現実的に「小銭をちょうだい」と言っているのです。

さて、このような一件は何も言葉の問題ではないような気がします。2ドルしかチャージされなかった私達だって、バーテンダーと交わした言葉はせいぜいHow much is a beer?ぐらいのもの。それくらいなら他の社員だって言っています。英語が話せなくても、騒げばフロントから日本語の話せる人がやって来ます。バーテンダーは、英語よりも、堂々と(ふてぶてしく?)していて慣れた様子か、文句を言ってきそうな奴かどうかを見ていた気がするのです。海外ではたとえ英語が流暢に話せなくても気後れせず堂々と(傍若無人とは別ですが)、多少は気を張って「甘く見てるとヤケドするぜ」という態度も有効です。カモになりそうか手強そうかは、第一声を発する前に、第一印象で伝わってしまうものなのだと思います。

I've been short-changed.
=You've short-changed me.
わざとおつりを少なく渡されました。

来週も夏休み準備号!お楽しみに。

Here is your change.
Hey, wait a minute. I don't think I've got the right change.
Oh, I'm sorry.
That's OK.

はい、おつりです。
ありがとう。あっ、ちょっと待った。おつりが足りないと思うんだけど。
あら、すみません。
大丈夫だよ。